国民的なアニメの舞台にもなったスウェーデンのストックホルム。
鮮やかな壁面で美しい造形の建物が並ぶ街並みは、ただ眺めながら歩くだけで人々を楽しませてくれます。
宮殿や博物館など、たくさんの観光スポットがありますがストックホルムの見どころは地上だけではありません！
実は、ストックホルムの地下鉄には90近い美術館があることをご存じですか？

今回は、スウェーデン・ストックホルム地下に広がる『地下鉄巨大美術館』を、写真と一緒にご紹介します。

なぜ地下鉄駅がアート空間に？

「世界一長い美術館」との呼び名も高いストックホルムの地下鉄駅。 普通の地下鉄駅とは異なり、アーティストによって手掛けられた壁面アートやオブジェなどが楽しめます。

この地下鉄美術館の始まりは、スウェーデンの地下鉄網が発達しはじめた1950年代です。
アートをより身近に感じてもらえるように、と二人の芸術家が活動を始めました。
駅ごとに「テーマ」を設け構内に作品を置いたり、あるいは「駅全体を作品にする」といった斬新な装飾を手掛けたり。
そんな地下鉄駅をアートに変える活動はどんどん広がり、今では90駅以上がこの「アートサブウェイ」として人気を集めます。

「Tunnelbana（トゥンネルバナ）」というのが、スウェーデン語で地下鉄という意味。
ストックホルムの街には「T」マークの看板が立っており、そこが地下鉄駅入り口の目印です。
壁面は地下の岩盤を掘ったままのむき出しで、洞窟のような空間が特徴的。
日本国内だとすべてきちんと舗装されているため、スウェーデンの地下鉄を始めて目にすると驚く人も多いかもしれません。
そんな地下鉄の壁面や床に、遊び心と芸術性に溢れたアートが施されています。

スウェーデンの地下鉄は、「ブルー」「レッド」「グリーン」3つのラインに分かれています。
多数ある地下鉄駅の中から、その一部をラインごとに写真付きでご紹介しましょう。

10・11番　ブルーライン

ブルーラインは市内中心部から始まる地下鉄主要ライン。
たくさんの地下鉄アートが集まっており、この地下美術を目的に乗車する観光客も多いです

クングストレッドゴーデン駅

緑の天井やダイスチェック（市松模様）の床が特徴的なこの駅。
古代ギリシャ時代を思わせる石造があったり貫録のある紋章が描かれていたりと、ストックホルムの歴史を感じさせてくれます。

クングストレッドゴーデンとは「王立公園」の意味。この公園ができた歴史を、駅全体で表現する圧巻のアートです。

駅構内だけでなく、待合ホームの天井も一面緑。どこをとっても見どころたっぷりで、思わず写真を構えたくなってしまいますね。

ティーセントラーレン駅

ブルー・レッド・グリーンの各線が交わる駅が「ティーセントラーレン駅」。ストックホルムの中で最もにぎわう駅とも言われています。
この駅の最下層には、スカンジナビア柄の模様が。
青と白の濃淡だけでできた模様は、北欧ならではの素朴でシンプルなおしゃれささえ感じますよね。

待合ホームにももちろんアートが。
スウェーデン旅行の際に私もこの駅のアートを見てきましたが、観光客から大人気でした。
女性なら「かわいい！」と思う人も多そうです。

中には「工事中？」と思わせるユニークなアートもあります。
鮮やかなブルーと白は、見ているだけで爽快な気分になれますよね。
通勤や通学中の地下鉄駅がこんなにおしゃれだったら毎日楽しいのに！と思わせてくれるアートです。

ロードヒューセット駅

次は「ロードヒューセット駅」。
この駅はまさに洞窟の内部を思わせるアートが特徴的です。
むき出しになった岩盤づくりの天井と、立派な石造を思わせる柱のオブジェが置かれており、まるで古代遺跡に入り込んでしまったような気分になります。
トンネルの入り口や、エレベーターまでアートが施されており、レトロ感もたっぷり。
地下鉄に乗るだけなのに、ちょっとしたアトラクションを想像できそうなわくわくする駅です。

ソルナ ストランド駅

「ソルナ ストランド駅」には地下にいることを忘れるような、青空のモニュメントが設置されています。

この地下鉄アートは、スウェーデン国内はもちろん、海外のインスタグラマーからも大人気。
青空をバックに記念撮影する人や、駅構内の写真を撮る人の姿が絶えません。
フォトジェニックな旅行写真をゲットしたい人は、ぜひソルナ ストランド駅へ。
この駅も利用客が多いのですが、平日の昼間は比較的空いているため写真撮影のチャンスです。

テンスタ駅

スウェーデンの歴史を思わせる壁画が一面に描かれた「テンスタ駅」。
また、おしゃれな字体で世界各国の言葉が添えられています。

実はテンスタ駅は、ストックホルムの中でも移民の多い街。
そこで、世界各国からスウェーデンへやってきた人々に向けて、歓迎の意味をアートに込めているのだそう。

まるでスウェーデン先史時代を思わせる壁画ですが、よく見てみると「さすが北欧だな」と思わせるほどゆるっとしているのが特徴。
カラフルな壁画がかわいく、落ち着く雰囲気の駅です。

ソルナ セントゥルム駅

頭上を見上げると、真っ赤！強烈な印象の残る「ソルナ セントゥルム駅」では、赤と緑のコントラストが楽しめます。
赤と緑は、スウェーデンの歴史の中でも大切な色。
そのためにこの色が選ばれたのかは定かではありませんが、頭上から視線を下げ地上階を見てみると、のどかな田園風景が広がっています。
ストックホルムが首都として発展する前の、壮大な大地を思わせるアートです。

この駅は色の組み合わせと奇抜さにはじめは驚く人も多いですが、ずっと眺めていると心が落ち着くのだそうですよ。

ハロンベルゲン駅

ハロンベルゲン駅では、突然かわいらしいイラストが登場。
この絵は子どもたちが描いたアートです！ 地下鉄駅がすべてキャンバスだなんて、一度体験してみたい絵画体験ですよね。
子どもたちが心ゆくまで自由に描いたアート、ぜひ目にしたいものです。

13・14番　レッドライン

レッドラインは大学や博物館のある路線。治安が良く、学生が住みやすい街とも言われています。

スタディオン駅

青空に描かれた虹のアート。 ここは1912年に開催されたストックホルムオリンピックのスタジアム目の前にある「スタディオン駅」です。 オリンピックをテーマにしたアートが飾られていて、中には当時のポスターを壁画にした作品も展示されているのだそう。
また、写真のような五輪をイメージしたレインボーアートも複数あります。

虹の向こうで列車が出発し、地下鉄とアートがうまく融合している様子がよくわかりますね。
思わずシャッターを切ってしまいそうになりますが、その通り撮影スポットとしても有名。乗客が少ないときを狙って写真を撮る観光客の姿も見られます。

他にもベンチや道案内看板にもアートが施されており、楽しい発見がたくさんできる駅です。

テクニシカホーグスクーラン駅

スウェーデンを代表する名門大KTH（王立工科大学）のある「テクニシカホーグスクーラン駅」。
工科大学だけあって、近未来的な雰囲気に包まれたアートがたくさん見られます。

幾何学的なオブジェや、凝ったライティングが特徴的なこの駅。
「なんともいえない不思議な雰囲気が好き」というファンも多いのだそうですよ。

ウニヴァーシティエテット駅

英語に直すと、「ユニバーシティ駅」という意味になる「ウニヴァーシティエテット駅」。
ストックホルムの中でも大学施設がたくさん立つエリアであるため、この名前が付けられたそう。

ここには、「学校施設ならでは」のアートを多数見つけられます。
写真は非常マークを全面的に出したデザインのドア。
とても分かりやすく、遠目からも目立ちます。

そのほかにも数式が並ぶ壁面や、単語のタイルで埋め尽くされたトンネルなど大学を感じさせるアートがたくさん。
通勤・通学のときも楽しく過ごせそうです。

19番　グリーンライン

17～19番に振り分けられているグリーンライン。
ここではユニークなアートが見つかります。

特におもしろいと思った地下鉄駅をご紹介しましょう。

トーリッズプラン駅

タイルをドットに見立て、まるでゲームの中に入り込んだかのようなアートが広がる「トーリッズプラン駅」。
タイルの色を変えることで、昔ながらのロールプレイングゲームを思わせる壁面が完成しています。

ポップで面白味のある地下鉄駅は、みなさん見たことないですよね。
最寄り駅がこんなにキュートだったら、思わず自慢したくなりそう。

実際に若い人や子どもだけでなく年配の方も楽しんでいるようで、市民からも好評の駅です。

まとめ

ひとつ見てみるとその世界観にハマってしまう、スウェーデン・ストックホルム地下鉄駅の巨大アート。
90駅以上もある中で、今回はその一部をご紹介しました。

スウェーデンの歴史や文化を楽しめるユニークで圧巻なアートの数々はまさに「地下鉄巨大美術館」ですね。